以下に書いたエッセイは、2016年12月頃に、FBにアップしたものです。熊大法学部も卒業式・入学式を迎えます。そこで、こちらに再掲します。
今日は,「熊大なう」というウェブマガジンの取材を受けた。
同僚が受けた取材がまとめられた「熊大なう」を参考にしつつ,研究の現状やその原点などをお話しするつもりで,予めペーパーを用意して取材に臨んだ。
割とスラスラと話しが進んで,最後に,今,「熊大生に求めることは」と問われた。
実は,この問いは想定していなかったので,その場で考えた。
そして,学生としての自由な時間を使って,熊大と現実社会の間を行ったり来たりしてほしいと答えた。
こう答えたのには,もちろん訳がある。私自身は,理論,とりわけ歴史や実証的なデータに裏打ちされた原理論を講じたり,ゼミの場で紹介したりすることを通して,あるべき刑事法の理想と現実とのギャップをどのようにして,理想に近づけていく方向で埋めるかを考えてもらおうとしている。
しかし,現実社会の圧力は凄まじい。たとえ,大学でどれほど理論を学んだとしても,現実社会の厳しさを前に,現実に自身を合わせてしまい,大学で学んだはずの理論は理想論としてその人のなから消えてしまうことは容易に生じうる。
これでは理論を学ぶ意味がない。そこで,自由な学生のうちにこそ,理論と現実社会の間を行ったり来たりして,決して,現実社会に飲みこまれずに,より良い社会を実現するための知力・体力を身に付けてほしいというのが,先の「熊大生に求めること」という答えの背景にある。
さて,うまくまとめられてウェブに掲載されるだろうか?